赤外線サーモグラフィで重要なのは、単発の温度値ではなく、温度分布を比較して異常傾向を読むことです。
設備診断では、同一設備内の左右差、相間差、流れ方向、負荷条件、周辺部との温度勾配を見て判断します。温度分布は、異常の有無を直接断定する道具ではなく、異常候補を絞り込むための比較情報です。

このページでは、温度分布の見方を「何を見るか」「どこまで判断できるか」「どこで誤診するか」に分けて整理します。
1温度分布の見方とは何か|見るべきなのは絶対温度ではなく比較差
温度分布の見方とは、サーモ画像の色だけを見ることではありません。
同条件下での温度差・分布形状・広がり方・偏り方を読むことです。設備診断では、正常機との比較、左右比較、相比較、時間変化比較が基本になります。
設備診断における温度分布の見方は、次の4点に要約できます。
- 局所高温か、面状高温か
点で高いのか、面として広がっているのかで原因候補が変わります。
接触不良や局部摩擦は局所化しやすく、断熱不良や流体温度差は面として出やすいです。 - 周辺と比べて不自然な差があるか
同じ電流、同じ荷重、同じ構造で比較したときに差があるかを見ます。
絶対温度だけでは判断しません。 - 温度勾配が自然か、不自然か
自然な加熱は滑らかな勾配になりやすく、不自然な異常は境界が急だったり偏りが出たりします。 - 再現性があるか
負荷を変えたとき、時間を変えたときにも同じ傾向が出るかを確認します。
2設備診断で見るべき温度分布パターン|局所高温・左右差・流れ方向
実務では、サーモ画像全体を漠然と見るのではなく、異常を示しやすい分布パターンに注目します。
特に、局所高温、左右差、相間差、流れ方向の偏り、接触部だけの発熱は、設備診断で使いやすい判断軸です。

現場で見やすい代表パターンは次のとおりです。
| パターン | 見え方 | 主な対象 | 判断の要点 |
|---|---|---|---|
| 局所高温 | 一点または狭い範囲だけ高い | 端子、接続部、軸受、摩擦部 | 接触不良、局部摩擦、集中発熱の可能性 |
| 左右差 | 同構造なのに片側だけ高い | モーター、軸受、回転体、配管 | 同条件比較が前提 |
| 相間差 | 三相のうち一相だけ温度差が大きい | 配電盤、端子台、遮断器 | 負荷差か接触異常かを分ける |
| 面状高温 | 広い範囲が面で高い | 断熱、炉壁、熱交換器、建物外皮 | 熱損失、断熱不良、流体条件の影響 |
| 流れ方向の偏り | 上流下流で不自然な差 | 配管、熱交換器、ダクト | 閉塞、付着、流量差の可能性 |
3温度分布で誤診しやすい例|反射・放射率・ピント不良・負荷条件不足
温度分布は便利ですが、見えたままを信じると誤診しやすい分野です。
特に、反射、低放射率、観察角度、ピント不良、負荷不足は、異常らしく見えて実際は異常でない典型例です。

誤診しやすい要因は、設備診断の実務では次の5つが中心です。
| 誤診要因 | 何が起きるか | 実務上の対策 |
|---|---|---|
| 反射 | 周囲熱源が映り込み、高温に見える | 角度変更、背景確認、反射源確認 |
| 低放射率 | 金属表面が実温度とずれて見える | 放射率補正、テープ貼付、比較診断重視 |
| ピント不良 | 境界が曖昧になり、局所異常が広く見える | 合焦確認、同距離再撮影 |
| 距離・画角不適切 | 小異常を平均化して見逃す | 対象サイズに合うIFOV確認 |
| 負荷条件不足 | 異常が温度差として出ない | 定常負荷時に再測定 |
NG 単発温度だけで判断
OK 反射・放射率・負荷条件を確認して比較
STEP 01
条件確認
STEP 02
撮影
STEP 03
比較
STEP 04
他手法確認
4温度分布からどこまで判断できるか|確定診断ではなく異常候補の絞り込み
温度分布は強力ですが、それだけで故障原因を確定できるとは限りません。
サーモグラフィは、異常の有無を直接断定するというより、異常候補を見つけて、点検・他手法診断へつなぐ一次診断手法として使うのが実務的です。
度分布から判断しやすいことと、判断しにくいことを分けると次のとおりです。
| 判断しやすいこと | 判断しにくいこと |
|---|---|
| 温度差の存在 | 故障原因の断定 |
| 異常候補の位置 | 劣化度の最終評価 |
| 比較上の不自然さ | 内部構造の詳細状態 |
| 時系列での悪化傾向 | 単独画像だけでの寿命予測 |
したがって、次のような使い分けが実務向きです。
- サーモグラフィ:異常候補の可視化
- 工業用内視鏡:内部状態確認
- 振動診断:機械異常の周波数分析
- 超音波カメラ / 超音波検知:漏れ、部分放電、摩擦音の確認
よくある質問 FAQ
- 温度分布の見方は、温度が高いところを探すことですか?
-
それだけでは不十分です。実務では、絶対温度よりも、同条件下での比較差・分布形状・偏り方を見ます。単発高温だけで異常と断定すると、反射や低放射率の影響で誤診しやすくなります。
- 温度分布の見方とNETDは同じですか?
-
違います。温度分布の見方は画像の解釈で、NETDは機器の温度分解能です。NETDは製品選定寄りの指標で、温度分布の見方は診断実務寄りのテーマです。
- 配電盤では何を比較すればよいですか?
-
三相の相間差、同一系統内の端子差、同負荷条件での左右差が基本です。単独温度ではなく、同一条件の比較対象を持つことが重要です。
- 金属面の温度分布はそのまま信じてよいですか?
-
低放射率金属面では注意が必要です。反射や放射率設定の影響を受けやすいため、補正、角度調整、比較診断、場合によっては補助材の使用を検討します。
- 温度分布だけで異常原因を断定できますか?
-
できないことが多いです。温度分布は異常候補の抽出に有効ですが、原因確定には他手法や現物確認が必要です。
