赤外線サーモグラフィは、物体が発する赤外線エネルギー(熱)を検出し、温度分布をカラー画像として可視化する装置です。
目視では確認できない内部の異常・劣化・温度むら・断熱不良・過熱を非接触で素早く検出できるため、予防保全・建築診断・電気設備点検・機械トラブルの早期発見など、幅広い分野で活用されています。
安全性・効率性・精度の向上を目的とした現代の設備保全に必須の検査技術となっています。

1. 赤外線サーモグラフィとは?仕組みと導入メリット
すべての物体は温度に応じた赤外線(熱放射)を放出しています。
赤外線サーモグラフィはこの放射エネルギーをセンサーで検出し、温度の高低を色の差として画像表示するシステムです。
温度分布を可視化する仕組み

- 温度が高い部分:赤・黄
- 温度が低い部分:青・紫
グラフや数値では把握しづらい面全体の温度状態を一目で把握できるため、
異常箇所を直感的に発見できます。
配電盤の過熱、モーターの劣化、建物の断熱不良、雨漏りの侵入経路などに有効です。
導入による3つの主要メリット(安全・早期発見・コスト削減)
従来の温度測定(接触式センサーや点検温度計)は、測定対象に触れる必要があり、危険箇所・高温・高電圧・高所・回転体・濡れ面では測定が困難でした。
赤外線サーモグラフィは 触れずに安全に測定できる非接触方式のため、以下の課題を解決します:
- 安全性の向上: 離れた場所から危険箇所の発熱を確認できる。
離れた場所から非接触で測定できるため、高温・高電圧・高所などの危険箇所でも、作業員の安全を確保できます。設備を停止させる必要もないため、点検時のリスクも低減します。 - 異常の早期発見: 故障の前兆である「微細な温度変化」を面で捉えることができる。
点(ポイント)ではなく面(エリア)で温度分布を瞬時にスキャンするため、目視ではわからない微細な温度異常を見逃しません。故障が発生する前の「兆候」を捉え、計画的な予防保全(CBM)へと移行できます。 - ダウンタイムの削減: 設備を止めずに診断が可能。
広範囲を短時間で検査できるため、点検工数を大幅に削減できます。また、設備を稼働させたまま診断できるため、突発的な故障による設備のダウンタイム(停止損害)を回避し、トータルコストを削減します。
2. 失敗しない選び方|必ず確認すべき重要スペックを徹底解説
機種選びで後悔しないためには、カタログの数値の意味を正しく理解し、用途に合った性能を見極めることが重要です。単純に「高性能なら良い」というわけではありません。
ここでは、最適な1台を選ぶために不可欠な、6つの技術的ポイントを分かりやすく解説します。

解像度の選び方(画素数が鮮明さを決める)
解像度は、サーモグラフィが表示できる温度画素(ピクセル)の数を示し、細部の視認性と異常検知精度に直結します。対象物が小さく距離がある場合、解像度が低いと異常が判別できない場合があります。
| 解像度 | 用途の参考例 |
|---|---|
| 80×60 | 簡易点検、教育、温度傾向確認 |
| 160×120 | 一般保全、倉庫・設備点検 |
| 256×192 | 建築診断、モーター点検、配電盤点検 |
| 320×240 | 産業保全、研究、断熱診断 |
| 640×480 | 詳細解析、FA設備、長距離観測、専門診断業務 |
細かな設備点検や建築診断には256×192以上、専門検査では640×480を推奨します。
温度分解能(NETD)の見方と重要性
NETD(Noise Equivalent Temperature Difference)は、微小な温度差をどこまで識別できるかを示す指標です。値が小さいほど性能が高く、異常の早期検知に向いています。
| 指標 mK(ミリケルビン) | 判断基準 |
|---|---|
| ≤ 60mK 0.06℃の温度差を区別 | 一般保全向け |
| ≤ 50mK 0.05℃の温度差を区別 | 建築診断・設備点検向け |
| ≤ 40mK 0.04℃の温度差を区別 | 研究用途・高精度解析向け |
微妙な断熱欠損やわずかな過熱差を検知する場合、NETD50mK以下が望ましいと言われています。
温度測定範囲の選び方(対象物に合わせて)
測定範囲は、対象物の温度上限に合わせて選んでください。
用途が異なると必要な温度幅が大きく変わります。
| 温度範囲 | 推奨現場 |
|---|---|
| -20~150℃ | 建築診断、漏水・結露解析 |
| -20~650℃ | 工場設備、配電盤、モーター |
| ~1500℃ | 溶接、鋳造、焼却炉、製鉄など高温工程 |
レンズと視野角(FOV)の関係
視野角(Field of View)は、どれだけ広い範囲を映せるかを示す数値です。
近距離の広範囲点検と、遠距離の狭い対象点検では選ぶべきレンズが異なります。
| レンズ選択 | 特徴・用途 |
|---|---|
| 広角レンズ(FOV 45–70°) | 建物壁一面、配電盤全面、広い範囲の探索に適する |
| 望遠レンズ(FOV 12–25°) | 送電線、天井配管、遠距離対象の検査 |
| 交換レンズ対応モデル | 多用途現場に最適 |

可視画像合成(MSX/スーパーファインコントラスト)やAI機能の有無
サーモグラフィの熱画像は、温度分布を色で示すため、どこを撮影しているのか場所の特定が難しくなることがあります。この課題を解決するのが、熱画像に通常の写真を重ね合わせる「可視画像合成(MSX/スーパーファインコントラスト処理」機能です。さらに近年では、AIが自動で異常を検知する先進的な機能も登場しています。
1.可視画像合成(MSX/スーパーファインコントラスト)とは?

- 課題の提示: 熱画像だけでは、配電盤の「どのブレーカーが熱いのか」、壁の「どの位置が断熱不良なのか」が分かりにくい。
- 解決策: 通常のデジタルカメラで撮影した写真(可視画像)の輪郭や文字情報を、熱画像の上に重ね合わせる技術。
- メリット:場所の特定が容易: ブレーカーの番号や機器の銘板が熱画像上で読めるようになるため、報告書作成時の手間が大幅に削減される。
視認性の向上: ぼんやりとした熱画像のエッジ(輪郭)がはっきりし、異常箇所が鮮明に見える。
2.最新のAI解析機能でできること
- 異常箇所の自動検知: あらかじめ設定した温度を超えた箇所をAIが自動で認識し、アラートを出したり、マーキングしたりする機能。見逃し防止に役立つ。
- テキスト・音声メモの自動認識: 現場で音声入力したメモをテキスト化して画像に添付する機能など、記録作業を効率化するモデルも登場している。
- 自動アノテーション(異常箇所強調表示)・温度トレンド自動解析・PDFレポート出力・点検履歴管理
【まとめ】 これらの機能は必須ではありませんが、点検箇所の数が多い現場や、報告書の作成効率を上げたい場合には、非常に強力な武器となります。特に初心者の方には、場所の特定が容易な可視画像合成機能付きのモデルを強くおすすめします。
その他チェックポイント(フレームレート、接続方式など)
フレームレートと動作安定性
| フレームレート | 特徴 |
|---|---|
| 9Hz | 建築診断・静止対象向け |
| 25–30Hz | 設備点検、回転体、動体計測 |
工場現場では 25–30Hz以上 が推奨されます。
接続方式(Wi-Fi / USB / HDMI / アプリ)
運用方法に応じて接続方式を選択します。現場作業効率に大きく影響します。
| 接続方式 | 特徴 |
|---|---|
| Wi-Fi/アプリ連携 | スマホやタブレットに即転送、現場共有が容易 |
| USB | PC解析向け、安定通信 |
| HDMI | 大画面表示、教育・会議・遠隔確認に |
| Bluetooth | 無線リモコン操作・ハンズフリー点検 |
価格帯別の目安とモデル選択
用途に応じて必要性能が異なるため、価格帯と合理性のバランスで選ぶことが重要です。
| 価格帯 | 主な用途 |
|---|---|
| 3–10万円 | 入門、簡易点検、教育 |
| 10–25万円 | 一般保全、倉庫・工場点検、建築基礎診断 |
| 30–60万円 | 建築断熱診断、電気設備点検 |
| 80万円以上 | 予防保全専門、解析用途、高解像度・望遠 |
| 150万円以上 | 640×480以上、高性能業務用、ドローン搭載 |
3. 【用途・業界別】活用事例と推奨スペック基準
赤外線サーモグラフィは、「熱」を可視化することで、目視では見つけられない設備異常やリスクを早期に発見する強力な検査手法です。非接触・非破壊で、設備を止めずに検査できるため、電気設備、建築、製造現場から研究開発まで、幅広い分野で安全性の向上とコスト削減に貢献しています。

ここでは、代表的な業界での具体的な活用事例と、それぞれの現場で求められる推奨スペックの基準を紹介します。自社の課題解決のヒントとしてお役立てください。
電気設備・プラント保全(発熱リスク低減の事例)
分電盤・配電盤・遮断器端子の緩みや劣化は過熱を引き起こし、火災の大きな原因となります。
サーモグラフィにより稼働中設備の安全点検が可能となり、重大事故の防止に大きく寄与します。
導入効果の例
- 過熱端子を特定し、火災リスクを事前に排除
- 過負荷箇所の温度上昇を検出し、停電事故を未然に防止
- 保全記録として定期測定データを保存し、安全管理報告の証拠として活用
建築診断・リフォーム(断熱不良・雨漏り発見の事例)
建物の断熱欠損や雨漏りは、内部の温度ムラとして表面に現れます。
壁や天井を壊すことなく内部状態を確認でき、原因特定の迅速化・修繕コスト最適化に貢献します。
導入効果の例
- 断熱材欠損部を画像化し、改修範囲を最小化(工期短縮・費用削減)
- 漏水経路を特定し、原因調査のための解体作業を80%削減
- 結露トラブルの原因を可視化し、居住者説明のエビデンスとして活用
研究開発・基板設計
課題:微小部品の熱解析、放熱設計の検証。
推奨:高解像度、接写(マクロ)機能、動画解析ソフト。
その他特殊用途(消防、畜産など)
消防救助では煙中での高温箇所・要救助者捜索、
畜産では発情・体調管理、
インフラ点検ではドローン搭載により橋梁・太陽光・送電線を遠距離から効率監視
工場の予防保全でコスト削減 / 早期異常検知
製造工場において、モーター・軸受・ギア・配管部などの劣化や摩耗は、温度異常として現れます。
サーモグラフィの定期点検により、異常の予兆を早期に検知でき、突発停止やライン損失を大幅に削減できます。
導入効果の例
- 回転機器の温度異常を検出 → 故障前の交換で500万円規模の停止損失を回避
- 定期計測データの比較により、劣化傾向を可視化し計画保全へ移行
- 作業時間 1/5、巡回点検の効率化
赤外線サーモグラフィは、故障してから修理する事後保全から、予防保全・状態基準保全(CBM)へ移行するための重要ツールです。
異常の兆候を数値だけでなく画像として可視化できるため、
現場判断の精度向上・安全確保・コスト削減を同時に実現します。
早見表
| 指標 | 内容 | 選定のポイント |
|---|---|---|
| 解像度 (画素数) | 温度画像の細かさ 鮮明さが決まる要素 | 80×60 / 160×120 / 256×192 / 320×240 / 640×480。 簡易用:80×60 プロ用:640×480 細かい対象は高解像度 |
| 温度分解能 (NETD) | どれだけ小さな温度差を検出できるかを表す指標 | NETD:40mK(ミリケルビン):0.04℃の温度差を区別できるという意味 NETDの数値が小さいほど、より小さな温度の変化を検出可能 |
| 温度測定範囲 | 測定可能な温度幅 | 建築:-20〜150℃、 電気設備:〜300℃ 工場設備〜650℃、 高温炉:〜1500℃ |
| レンズ / FOV | 距離と測定対象の大きさの関係性。 「遠くの小さな異常」を見つけるための選定基準 | 近距離検査は広角、 遠距離は望遠レンズが有利 |
| 可視画像合成機能(MSX等) | 熱画像だけでは場所が特定しにくいため、実画像と重ね合わせる機能の重要性。 | MSX機能:FLIR 融合機能フュージョン:HIKMIRO |
4. プロ厳選!用途別おすすめモデル5選
サトテックが厳選した、コストパフォーマンスと信頼性を兼ね備えた最新モデルをご紹介します。
1. 【電気設備・ビルメン全般】迷ったらこれ!圧倒的コスパの標準機:ハンディ型
分電盤・配電盤・遮断器端子の緩みや劣化は過熱を引き起こし、火災の大きな原因となります。
サーモグラフィにより稼働中設備の安全点検が可能となり、重大事故の防止に大きく寄与します。

- スペック: 解像度 256×192 / 温度範囲 -20~550℃ / Wi-Fi対応
- プロの推奨ポイント: この価格帯で**25万画素クラス(256×192)**の高解像度を実現している点が驚異的です。
配電盤の端子やモーターの発熱もしっかり捉えられます。
「Super IR」技術で画像も鮮明。
Wi-Fiでスマホに画像を転送できるため、現場からの報告もスムーズです。 - 導入効果の例:
過熱端子を特定し、火災リスクを事前に排除
過負荷箇所の温度上昇を検出し、停電事故を未然に防止
保全記録として定期測定データを保存し、安全管理報告の証拠として活用工場保全、ビルメンテナンス、電気設備点検
2. 【建築診断・持ち運び重視】スマホサイズで高性能:ポケット型
建物の断熱欠損や雨漏りは、内部の温度ムラとして表面に現れます。
壁や天井を壊すことなく内部状態を確認でき、原因特定の迅速化・修繕コスト最適化に貢献します。

- スペック: 解像度 256×192 / タッチパネル / 堅牢設計
- プロの推奨ポイント: 名前の通り作業着のポケットに収まるサイズながら、性能はハンディ型の上位機種と同等です。3.5インチのタッチスクリーンは操作性が良く、現場で直感的に温度異常を特定できます。建築現場の断熱診断や、移動の多い点検業務に最適です。
- 導入効果の例:
断熱材欠損部を画像化し、改修範囲を最小化(工期短縮・費用削減)
漏水経路を特定し、原因調査のための解体作業を80%削減
結露トラブルの原因を可視化し、居住者説明のエビデンスとして活用
3. 【簡易点検・DIY】スマホがサーモグラフィに変身!:スマホ装着型
スマートフォンに接続して使用する軽量コンパクトなタイプで、低コストで導入でき、現場共有性が高いモデルです。写真・動画の管理、クラウド保存、オンライン共有などの運用が容易です。

- スペック: 解像度 256×192 / バッテリー不要 / スマホ接続(iOS/Android)
- プロの推奨ポイント: お手持ちのスマートフォンに挿すだけで使える画期的なモデルです。
充電不要で、専用アプリからすぐに撮影・分析が可能。
**低価格ながら解像度はプロ仕様(256×192)**なので、配管の水漏れ確認や床暖房の位置確認など、手軽かつ鮮明に見たい方におすすめです。 - こんな現場に: 簡易診断 / 温度の傾向把握 / 建築現場確認 / 個人利用 / 教育用途
4. 【高所・遠距離】プロ仕様のハイスペック・ハイエンド機:超高解像度 / 長距離測定タイプ
高解像度(640×480以上)や望遠レンズを搭載し、遠距離から微小異常を識別できるプロフェッショナル向けモデルです。送電線、太陽光発電所、煙突、橋梁点検などに利用されます。

- スペック: 解像度 640×480(VGA) / レーザー距離計 / 交換レンズ対応
- プロの推奨ポイント: 640×480の最高クラスの解像度を持ち、遠くにある小さな異常発熱も見逃しません。
オプションの望遠レンズを使えば、高圧電線やプラントの高い位置にある配管も地上から安全に診断可能。
報告書作成機能も充実しており、専門的な診断業務に必須の1台です。 - こんな現場に: 大規模プラント、高圧受変電設備、インフラ点検、研究開発
5. 【低予算導入】とにかく安く導入したい方向け【簡易・DIY向け】

- スペック: 解像度 96×96 / 可視カメラ搭載
- プロの推奨ポイント: 「予算は限られているが、数値だけでなく画像で記録を残したい」というニーズに応える超低価格モデル。
低解像度ですが、通常の写真(可視画像)と熱画像を重ね合わせる機能があるため、どこが熱いのかがひと目でわかります。 - こんな現場に: 初期導入、食品温度管理、簡単な機械チェック
6.【広範囲・インフラ点検】ドローン搭載型サーモグラフィ

- スペック: サーマル解像度 640×512 / 可視光カメラ 最大56倍ズーム / 温度範囲 -20~500℃
- プロの推奨ポイント: 人が容易に近づけない場所や広大なエリアを、足場を組まずに短時間で点検できるのが最大のメリットです。
640×512の高解像度熱画像で異常箇所を広範囲に探索し、疑わしい箇所があれば最大56倍ズームの可視カメラでクラックや破損状況を詳細に確認する、といった高度な点検業務がこれ一台で完結します。 - 導入効果の例:
太陽光パネル(メガソーラー)の不良検査
送電線点検
ビル外壁・屋根の断熱不良や雨漏り調査
橋梁や送電線などのインフラ維持管理
災害捜索
早見表
| 用途 | 課題 | 目的 |
|---|---|---|
| ・電気設備点検 (過熱・劣化・緩み診断) 中解像度以上、高温対応 | 配電盤・ブレーカー・分電盤・遮断器・高圧受電設備などの端子の緩み・劣化・接触不良・過負荷は、発熱として表面に現れます。 | 設備を停止せずに過熱箇所を瞬時に特定でき、火災・停電トラブルを未然に防止。 ・端子緩み・過電流・劣化の早期検知 ・大電流設備の安全監視 ・予防保全の記録比較(定期測定) |
| ・建築診断 ・リフォーム (雨漏り・断熱) 高感度(NETD重視)、広角レンズ。 | 建築物の断熱欠損、漏水経路、壁内腐食、結露箇所、床暖房の配管位置などを可視化します。 | 壊さずに内部状態を確認でき、工期短縮・診断品質向上に貢献 ・断熱欠損・気密性能評価 ・雨漏り診断・水分侵入経路の特定 ・結露環境の解析と改善検討 |
| ・研究開発(R&D) ・基板設計 高解像度、接写(マクロ)機能、動画解析ソフト。 | 微小部品の熱解析、放熱設計の検証。 | ・熱物性研究 / 実験観測 ・生体血流や末梢循環の評価 ・教育分野での可視化教材 |
| ・予防保全 ・劣化診断 ・保守計画 | 事後保全から**予防保全・状態基準保全(CBM)**へ移行する上で不可欠なツールです。 | 定期測定データの比較により、劣化傾向を数値化し、突発停止ロス・保守コスト削減を実現 ・定期点検データの推移管理 ・劣化予測と交換時期の最適化 ・安全・品質の根拠データとして保存 |
| 特殊用途 ・消防 ・ドローン点検 ・ 畜産 ・ 体温測定 | 消防救助では煙中での高温箇所・要救助者捜索、 畜産では発情・体調管理、 インフラ点検ではドローン搭載により橋梁・太陽光・送電線を遠距離から効率監視 | ・消防・災害救助・高温火点探索 ・ドローン点検(太陽光パネル・橋梁・送電線) ・畜産個体管理・体調異変検知 ・検温・体表温度測定 |
5. タイプ別の比較|利用シーンに適したモデルを選ぶ
赤外線サーモグラフィは、用途・現場環境・検査精度・運用方法 によって最適なタイプが異なります。
近年は、ハンディ型、スマートフォン接続型、AI解析型、長距離望遠型、ドローン搭載型など、目的に特化したモデルが増えています。
ここでは、代表的な5カテゴリの特徴と選定ポイントを整理し、現場課題に最適な1台を選ぶための比較指針として解説します。
タイプ別の特徴比較表(ハンディ型・スマホ型・設置型など)
性能だけでなく、使い勝手を左右する「形状」も重要な選定ポイントです。
ハンディ型(ガングリップ型)
最も一般的。片手で操作でき、現場移動が多い場合に最適
スマートフォン装着型
低コストで手軽。簡易的なチェックや持ち運びやすさを重視する場合におすすめ
設置型・固定型
生産ラインの自動監視や定点観測用。PCやシステムとの連携が前提。
ハンディ型サーモグラフィ
ハンディ型は、片手で簡単に操作できる汎用タイプで、最も広く採用されています。
電気設備点検・工場保全・建築診断など、幅広い用途でバランスの取れたモデルです。
解像度・NETD・レンズ角度のバリエーションが豊富で、初めて導入する場合にも適しています。
特長
- 取り回しが良く、現場での即時確認が容易
- 一般保全・建築診断の標準タイプ
- 多機能(温度ポイント/エリア/等温線/LCD表示)
用途
配電盤・モーター点検 / 断熱診断 / 結露・雨漏り解析 / 設備保全
スマートフォン接続型(Android / iPhone)
スマートフォンに接続して使用する軽量コンパクトなタイプで、低コストで導入でき、現場共有性が高いモデルです。
写真・動画の管理、クラウド保存、オンライン共有などの運用が容易です。
特長
- 小型・低価格ですぐに導入可能
- スマホ機能(zoom・記録・共有)を最大活用
- 建築・点検業者のサブ機、エンジニア携帯用として最適
用途
簡易診断 / 温度の傾向把握 / 建築現場確認 / 個人利用 / 教育用途
AI解析型 / 産業向けクラウド解析
AIによる異常検知・画像解析・トレンド分析を備え、属人的な判断を排除し、診断精度と作業効率を高めるモデルです。
保全業務のDX化、レポート自動生成、設備監視の標準化に貢献します。
特長
- AI自動解析により異常箇所を自動表示
- PDFレポート自動生成、クラウド共有が容易
- 予防保全(CBM)を推進する現場向け
用途
工場保全DX / 劣化予測 / 設備監視センター / 大規模プラント
超高解像度 / 長距離測定タイプ
高解像度(640×480以上)や望遠レンズを搭載し、遠距離から微小異常を識別できるプロフェッショナル向けモデルです。
送電線、太陽光発電所、煙突、橋梁点検などに利用されます。
特長
- 長距離観測、高精細測定に対応
- 微細な温度差や小さな異常も確実に検知
- 高倍率ズーム・交換レンズ対応
用途
インフラ点検 / 太陽光パネル検査 / 送電線 / 橋梁 / プラント設備高度診断
ドローン搭載型サーモグラフィ
広い敷地や危険環境を安全に効率よく点検できるタイプで、空撮サーモで大規模設備の短時間点検を可能にします。
建築・災害・点検業務で急速に需要が増加しています。
特長
- 高所作業不要・安全性向上
- 太陽光/送電線/橋梁/大規模屋根の短時間スキャン
- 災害救助・捜索にも活用
用途
太陽光パネル不良検査 / 送電線点検 / 災害捜索 / 畜産管理 / 建築屋根検査
6. 正確な測定のために知っておくべき「注意点」
高価なサーモグラフィを購入しても、使い方が間違っていると正しい温度は測れません。特に初心者が陥りやすい「放射率設定」と「環境要因」について、専門家の視点で解説します。
「放射率」の設定と影響
サーモグラフィで正確な温度を測るために、最も重要で、かつ最も誤解しやすいのが「放射率(ε:イプシロン)」の設定です。同じ温度の物体でも、材質や表面状態によって赤外線を出す能力(放射率)が異なるため、カメラ側で正しい値を設定しないと、表示温度が実際の温度と大きくずれてしまいます。
放射率とは?
- 物体が熱放射(赤外線)を出す能力を、理想的な黒体(放射率1.0)を基準に0.0〜1.0の数値で表したもの。
- 例:人間の肌やコンクリートは約0.95(赤外線をよく出す)、磨いた金属は約0.1(赤外線をあまり出さない)。
なぜ金属は測りにくいのか?
- ステンレスやアルミニウムなど、表面がピカピカした金属は放射率が非常に低いため、実際の温度よりも大幅に低く表示されてしまう。これが「サーモグラフィは金属が苦手」と言われる理由。
正しい測定のための対策
- 放射率設定の変更: 測定対象の材質に合わせて、カメラのメニューで放射率の値を変更する(一般的な材質の目安表がカメラに内蔵されていることも多い)。
- 黒体スプレー・テープの使用: 測定したい金属表面に、放射率が既知(通常0.95)の黒体スプレーを塗布したり、黒体テープを貼ったりすることで、その部分の放射率を高くして正確に測定する。
「反射」と測定環境の注意点
放射率と並んで測定精度に大きな影響を与えるのが、周囲環境からの「反射」です。
特に放射率が低い(表面がピカピカした)対象物を測定する場合、鏡のように周囲の熱源が映り込んでしまい、それが測定対象の温度であるかのように誤検知されてしまうことがあります。
反射の影響とは?
- 測定対象の表面に、太陽光、照明、あるいは撮影者自身の体温などが赤外線として反射し、カメラがそれを捉えてしまう現象。
- 例:冷たい金属板に撮影者の姿が映り込み、その部分だけ温度が高く表示される。
反射を防ぐためのテクニック
- 測定角度の工夫: 対象物の正面(垂直)から測定すると撮影者自身が反射しやすいため、少し斜めから角度をつけて測定する。
- 周囲の熱源の確認: 太陽光が直接当たっていないか、近くに高温の設備や照明がないかを確認し、可能であれば遮蔽したり、測定位置を変えたりする。
- 屋外測定の時間帯: 太陽光の反射や日射による蓄熱の影響を避けるため、屋外の建物診断などは、日没後や早朝に行うのが理想的。
7. デモ機貸出とアフターサポート|サトテックが選ばれる理由
カタログスペックだけでは、実際の「見え方」や「操作感」はわかりません。サトテックでは、安心して導入いただくために購入前の実機デモや充実したサポート体制をご用意しています。
デモ機貸出サービス: 現場で実際に試せる安心感。
技術サポート: 経験豊富なスタッフによる選定相談。
クロージング: お問い合わせ・見積もり依頼へのCTA
8. よくある質問(FAQ)
- サーモグラフィはどの解像度を選べばよい?
-
用途に応じて 256×192以上 が推奨。
建築診断や電気設備点検では 320×240以上、専門診断では 640×480以上 が望ましいです。詳細
- 80×60:簡易点検・温度傾向の把握
- 160×120:一般的な設備点検
- 256×192:建築・モーター・配電盤の点検に最適
- 320×240:断熱診断・工場保全・異常検出精度向上
- 640×480:専門解析・長距離点検・高精度検査
- 建物診断ではどのモデルが最適?
-
256×192以上の解像度、NETD≦50mK、広角レンズ対応モデル が推奨です。
詳細
建築診断では、断熱欠損や雨漏りの微妙な温度ムラを測定する必要があります。
推奨仕様:- 解像度 256×192〜320×240
- NETD 50mK以下
- 広角レンズ (45°以上)
- 温度範囲 −20~150℃
- レポート機能/分析ソフト付
- NETDとは?どの数値が良い?
-
NETDは温度分解能(微小温度差の識別能力)。
数値が小さいほど高性能で、50mK以下が実務向けの基準です。 - 防爆エリアで使えるのか?
-
防爆サーモグラフィ専用機種のみ使用可能です。
通常モデルは防爆区域では使用できません。詳細
- 危険場所区分 Zone0〜Zone2 / Class I Division 1 / IIC T4 仕様のモデルが必要
- 石油・化学プラント・ガス設備等では EX認証モデルを選択
例:本質安全防爆型サーモグラフィ(Ex ia / Ex ib)
- エア漏れ検知はできる?
-
温度差による影響が大きい箇所ではサーモグラフィで視覚化可能ですが、
精密検査には超音波リークディテクターの併用が最適です。詳細
- 温度差がある場合 → サーモで気流の変化が見えることがある
- 温度差が小さい場合 → サーモでは困難
- AI超音波カメラ(AI56/AI76)との併用が最強
- 圧縮空気・蒸気・真空漏れ → 超音波計測で特定
赤外線サーモグラフィは、用途に応じて選定ポイントが大きく変わる専門機器です。
現場目的(建築/設備/電気/予防保全/研究)に合わせて最適モデルを選ぶことで、
診断精度・安全性・作業効率・コスト削減効果を最大化できます。
