赤外線サーモグラフィは非接触で温度分布を可視化できる優れた手法ですが、表示される温度は必ずしも真値とは一致しません。

その理由は、測定結果が放射率・反射・距離・観察条件・対象サイズなどの影響を受けるためです。
本ページでは、サーモグラフィの代表的な誤差要因と、誤判定を防ぐための実務対策を整理します。
サーモグラフィの測定誤差とは何か
サーモグラフィの誤差とは、表示温度と実際の表面温度とのズレを指します。
このズレは単一の原因ではなく、複数の条件が重なって発生します。
サーモグラフィは、対象から届く赤外線エネルギーを温度に換算しています。
そのため、以下のような条件が変わると温度も変わります。
- 放射率設定
- 周囲の反射
- 測定距離
- 観察角度
- 対象サイズ
つまり、サーモグラフィの温度は、 “測定条件込みの温度”であり、絶対値だけを単独で評価するのは危険です。
主な誤差要因① 放射率と反射
サーモグラフィの誤差で最も影響が大きいのが、放射率と反射見掛け温度です。
■ 放射率の不一致
設定値と実際の表面状態が一致しないと、温度換算がずれます。
■ 反射の影響
低放射率面では、周囲の熱源が映り込みます。
つまり、 対象が熱いのではなく 周囲が映っているだけというケースが発生します。
特に以下は要注意です。
- 金属光沢面(アルミ・ステンレス)
- メッキ面
- 鏡面仕上げ
実務ポイント
- 放射率だけでなく反射も確認する
- 金属面は絶対温度を鵜呑みにしない
- 比較診断を優先する
NG 金属面の温度をそのまま判断
OK 放射率と反射を考慮
主な誤差要因② 距離・対象サイズ・フォーカス
対象が小さいのに遠距離から測定すると、周囲の温度が混ざり、正確な温度が取得できません。

■ 測定距離
距離が遠いほど、1ピクセルあたりの対象範囲が広くなります。
■ 対象サイズ
対象が小さいと、背景温度が混ざります。
■ フォーカス不良
焦点が合っていないと、温度境界がぼやけます。
実務ポイント
- 対象を画面いっぱいに入れる
- 必ずピントを合わせる
- 遠距離測定を避ける
- チェックリスト
距離 / サイズ / フォーカス
主な誤差要因③ 観察角度と環境条件
観察角度や周囲環境も、温度誤差の原因になります。
■ 観察角度
斜めから見ると反射の影響が増えます。
■ 環境条件
- 風 → 表面温度低下
- 日射 → 温度上昇
- 蒸気 → 測定不安定
実務ポイント
- 正面から測定する
- 日射・風の影響を避ける
- 条件を揃えて比較する
用途別診断ページ
誤差を前提にした正しい判断方法
サーモグラフィの正しい使い方は、誤差をゼロにすることではなく、誤差を理解して判断することです。

実務では次の考え方が重要です。
■ 絶対温度より比較を重視
- 相間比較
- 同型比較
- 過去比較
■ 異常検出に使う
- 温度差を見る
- 偏熱を見る
■ 原因は他手法で確定
- 振動診断
- 超音波診断
- 内視鏡
振動診断
超音波カメラ診断
工業用内視鏡
よくある質問と回答FAQ
- 温度が合わない原因は何ですか?
-
放射率、反射、距離、角度など複数要因です。
- 放射率だけ合わせれば正確ですか?
-
いいえ。反射や距離も影響します。
- 金属面はなぜ誤差が出やすい?
-
反射が強いためです。
- サーモグラフィは絶対温度を見るべき?
-
比較診断を優先すべきです。
- どの誤差が一番大きい?
-
放射率と反射です。
- 誤差を完全になくせますか?
-
完全には無理です。管理することが重要です。
