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  4. 赤外線サーモグラフィの測定手順

赤外線サーモグラフィの測定手順

赤外線サーモグラフィは、設備表面の温度分布を非接触で可視化できる有効な診断手法です。
ただし、温度画像は「撮れた」だけでは意味がありません。設備診断で重要なのは、どの条件で撮ったか、何と比較したか、温度差をどう解釈したかです。

技術担当

このページでは、設備診断におけるサーモグラフィの使い方を、
目的設定 → 条件確認 → 撮影 → 比較 → 仮説化 → 裏付け
という実務フローで整理します。


まず決めるべきこと:何を診断したいのか

サーモグラフィ診断は、カメラを向ける前の目的設定で結果の質が決まります。
「高温部を見つけたい」のか、「相間差を見たい」のか、「熱損失を見たい」のかで、比較対象も撮影条件も変わります。

測定前にまず明確にするのは、診断目的です。代表的には次の4つに分かれます。

  • 異常発熱の有無を確認する
  • 同型設備・相間・左右差を比較する
  • 断熱不良や熱損失を確認する
  • 過去データとのトレンド変化を見る
  • チェックリスト
    • 対象設備
    • 見たい異常
    • 比較対象
    • 判定の目的

測定前に確認する条件:稼働状態・安全・周囲環境

サーモグラフィは、停止中よりも稼働中・負荷がかかった状態で意味のある差が出やすい一方、周囲環境の影響も受けます。風、日射、周囲熱源、通電条件、安全距離を無視すると、異常の見落としや誤判定につながります。

撮影前に確認したい条件は次の通りです。

  • 設備が通常運転か、負荷運転か
  • 測定時刻や外気条件が比較に適しているか
  • 日射、風、蒸気、熱源の影響がないか
  • 近接可能範囲と安全距離が確保できるか
  • 同条件で比較できる対象があるか

撮影条件の設定:放射率・反射・距離・フォーカス

サーモグラフィの表示温度は、放射率設定、反射見掛け温度、測定距離、対象サイズ、フォーカスに左右されます。
ここを雑にすると、熱画像は撮れていても温度の解釈を誤ります。

実務で特に重要なのは以下です。

■ 放射率を確認する
対象表面が塗装面か、酸化面か、金属光沢面かで条件が異なります。低放射率面では表示温度がずれやすくなります。

■ 反射見掛け温度を意識する
光沢面は周囲の赤外線を反射するため、対象物が熱いのではなく、周辺熱源が映っているだけのことがあります。FLIRの手順資料では、反射見掛け温度を求める工程が明示されています。

■ 距離と対象サイズを合わせる
対象が小さいのに遠距離で撮ると、周辺温度が混ざりやすくなります。Optris資料では、距離と光学分解能の関係が精度に影響すると説明されています。

■ フォーカスを合わせる
焦点が甘いと温度境界がぼやけ、局所発熱の位置や最大温度の読み取りを誤りやすくなります。FLIRの技術ノートでも、良い熱画像には正しいフォーカスが重要とされています。

NG

オート設定のまま撮る

OK

放射率・反射・距離・フォーカスを確認

撮影後の読み方:比較診断を優先する

サーモグラフィは、単発の温度値を絶対評価するより、比較診断に強い手法です。
同型設備、相間、左右、入口出口、過去データと比較することで、異常の兆候を見つけやすくなります。

撮影後は、まず以下の順で読みます。

  1. 局所発熱があるか
  2. 左右差・相間差・同型差があるか
  3. 温度ムラや偏熱があるか
  4. 過去データより変化しているか
  5. その差が運転条件で説明できるか
  • 発熱確認
  • 比較確認
  • 条件確認

温度が高い=即異常ではない


最後は原因を裏付ける:単独判断しない

サーモグラフィは異常検出に強い一方で、故障原因の最終断定までを単独で担う手法ではありません。
温度異常を見つけた後は、必要に応じて他の診断手法で裏付けます。

たとえば次のように使い分けます。

  • 軸受や回転体の異常兆候
    → 振動診断で周波数成分や傾向を確認
  • 圧縮空気漏れや部分放電の疑い
    → 超音波診断で音響的に確認
  • 内部状態の直接確認が必要
    → 工業用内視鏡で内部観察

つまり、サーモグラフィの正しい使い方は、
異常を見つける入口として使い、原因確定は他手法と組み合わせることです。

 振動診断

超音波カメラ診断

工業用内視鏡

よくある質問と回答FAQ

赤外線サーモグラフィは何を測っていますか?

対象表面から放射される赤外線をもとに、表面温度分布を可視化しています。内部温度を直接見ているわけではありません。

サーモグラフィの測定前に最初に決めることは何ですか?

診断目的です。異常発熱確認、相間比較、熱損失確認など、何を見たいかを先に決めることで、撮影条件と比較対象が明確になります。

なぜ放射率や反射の確認が必要なのですか?

放射率設定が実際の表面状態と合っていないと温度換算がずれ、低放射率面では周囲の熱源が反射して見かけ温度がずれるためです。

サーモグラフィは絶対温度を見るべきですか?

条件が整っていれば絶対温度も参考になりますが、実務では同型設備や相間、左右、過去データとの比較診断を優先する方が安全です。

焦点や距離は本当に重要ですか?

重要です。焦点不良や対象サイズに対する分解能不足は、局所発熱の位置や温度値の読み取りを不安定にします。

サーモグラフィだけで故障原因を断定できますか?

一部のケースを除き、通常は難しいです。異常候補を見つけた後、振動・超音波・目視・保全履歴などで裏付けるのが実務的です。


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