粉じん計(粉塵計)は、使用する目的や法律(ビル管法・作業環境測定基準など)によって選ぶべき機種が厳密に異なります。「どれを買えばいいかわからない」「校正期間やランニングコストが気になる」というご相談を多くいただきます。 本記事では、測定器専門としての販売実績をもとに、失敗しない粉じん計の選び方と、柴田科学・カノマックスなどの人気機種を徹底比較します。
この記事でわかること
- 【目的別】あなたの現場に最適な一台
- 光散乱式とピエゾバランス式の違い
- 購入後の校正(較正)やメンテナンスの注意点

粉じん計選びの基本:まずは「目的・法律」を確認しよう
粉じん計選びで最も重要なのは「どの法律・規制に対応する必要があるか」です。大きく分けて以下の3つのパターンがあります。
ビル管理技術者、作業環境測定士、建設現場監督、工場の安全管理担当者必須の選び方のポイントです。

- 対象: ビルメンテナンス業、清掃業者
- 必須機能: 光散乱式、較正(校正)認可製品
- 推奨機種: 日本カノマックス 3432 | 柴田科学 LD-3S
- 「建築物衛生法(旧ビル管法)に基づく空気環境測定には、日本建築衛生管理教育センターの較正を受けた機器が必要です。」
【メーカー比較】柴田科学 vs 日本カノマックス 人気機種の実力
業界の2大メーカーである「柴田科学(Sibata)」と「日本カノマックス(Kanomax)」。どちらも高性能ですが、操作性や特徴に違いがあります。プロの視点で比較します。
| 比較項目 | 柴田科学 (例: LD-5R) | 日本カノマックス (例: Model 3432) |
|---|---|---|
| 特徴 | 拡張性が高い。ポンプ吸引式で安定。 | 軽量・コンパクト。直感的な操作。 |
| 強み | オプションが豊富で多用途に対応。 | とにかく軽い。持ち運びが多い現場向き。 |
| 画面 | 情報量が多い液晶 | シンプルで見やすい数値表示 |
| 価格帯 | 機能により変動(ミドル〜ハイ) | コストパフォーマンスが高い |
測定方式の違い「光散乱式」と「ピエゾバランス式」とは?
専門用語で戸惑いやすい「測定原理」の違いを解説します。ここを間違えると、現場によっては正確な数値が出ない(エラーになる)場合があります。
光散乱式(デジタル粉じん計)とは?
- 仕組み: 粒子に光を当てて、その散乱光で濃度を測る。
- メリット: リアルタイムで測定可能、高感度。
- 注意点: オイルミストや水滴(霧)の影響を受けやすい。
- 代表機種: LD-5R、3432
ピエゾバランス式粉じん計とは?
- 仕組み: 水晶振動子に粉じんを付着させ、重量変化を測る。
- メリット: 「質量濃度」を直接表示できる。オイルミストの影響を受けにくい。
- 用途: 工場の切削油現場など。
- 代表機種: 日本カノマックス Model 3521

購入前に知っておきたい「校正(較正)」とメンテナンス
粉じん計は「買っておしまい」ではありません。法律で定められた定期的な「校正(キャリブレーション)」が必要です。これを怠ると測定データが無効になるリスクがあります。
通常は1年ごとに校正が必要です。
サトテック(佐藤商事)なら、面倒な手続きを代行します。
期間は約3〜4週間(メーカーや時期による)。
「較正証明書」「トレーサビリティ体系図」などが発行されます。
注意:ビル管法の校正終了機種について 旧モデル(LD-2、3431など)は校正受付が終了しています。後継機種(LD-6N2、3432)への買い替えをご検討ください。
よくある質問(FAQ)
粉じん計の導入に関して、お客様からよくいただく質問をまとめました。
- デジタル粉じん計はPM2.5の測定にも使えますか?
-
はい、機種によっては可能です。例えば柴田科学のLD-5Rは、分粒装置を交換することでPM2.5の簡易測定に対応します。
- レンタルと購入、どちらが得ですか?
-
年に数回の測定であればレンタルが安価ですが、頻繁に使う場合や「いつでも使える状態」が必要な場合は購入をおすすめします。
- 見積書や請求書払いは対応していますか?
-
はい、対応可能です。官公庁や教育機関への納入実績も多数ございますので、安心してお問い合わせください。
知っておきたい用語解説
意外と知らない?「質量濃度(mg/m³)」と「相対濃度(CPM)」の違い
粉じん計の画面には、機種によって異なる単位が表示されます。法律に基づく報告書を作成するためには、この2つの違いと「換算方法」を理解しておく必要があります。
- 質量濃度(しつりょうのうど) 単位:mg/m³(ミリグラム 毎 立方メートル)
-
空気1立方メートルあたりに、「何mgの重さ」の粉じんが含まれているかを示す値です。 ビル管法や作業環境測定基準などの法律で定められた基準値は、すべてこの「質量濃度」で指定されています。最終的な報告書にはこの数値を記載する必要があります。
- 相対濃度(そうたいのうど) 単位:CPM(Count Per Minute / カウント 毎 分)
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光散乱式粉じん計が計測した、1分間あたりの「散乱光の量(またはパルス数)」です。 あくまでセンサーが反応した数値であり、実際の「重さ(質量)」ではありません。粉じんの性質(色や粒の大きさ)によって数値が変動するため、「相対」濃度と呼ばれます。
- 【重要】相対濃度から質量濃度への計算式
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デジタル粉じん計(光散乱式)の多くは、まずセンサーで「相対濃度(CPM)」を測ります。 そこに、現場ごとの「質量濃度変換係数(K値)」を掛け合わせることで、法律で必要な「質量濃度(mg/m³)」を算出しています。
$$質量濃度 (mg/m^3) = 相対濃度 (CPM) \times 質量濃度変換係数 (K値)
技術担当プロのアドバイス:
最新のデジタル粉じん計(柴田科学 LD-5Rなど)は、このK値を事前に設定することで、画面上に直接「mg/m³」を表示させる機能を持っています。計算の手間を省きたい場合は、こうした機能を持つ機種(質量濃度換算機能付き)を選ぶのがおすすめです。
